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2007年10月31日(水)

[買物|本] 時砂の王

小川一水さん、「時砂の王」(早川書房・ハヤカワ文庫JA)。 表紙イラストは撫荒武吉さん。 630円で購入。

挿絵なし。 ハヤカワ文庫だし、ジャンルとしてはSFなんだと思います。 小川一水さんの小説は、既存の世界でストーリーを語るのではなく、世界そのものをゼロから構築している感じがするので好きです。 この時砂の王は全体的に勧善懲悪チックな匂いがないし、ベースにあるのが怒りだったり恐れだったり空虚な感じだったりでいかにもマイナスイメージだし、スカっとしたお話ではなくしんみりした感じのお話です。

時の流れは一本道だと思っていたんだけど、樹状だと考えると歴史が、未来が、爆発的に豊かになるね。 時間枝という概念は気に入りました。 一本道だと初めから存在さえしなかった物事が、無数の時間枝の中にはしっかりと存在し、そしてそのほとんどが消滅していく。 残酷だけど、こっちの概念のほうがドラマチック。 リアルタイムでダイナミックな成長と消滅を繰り返す時間の樹を思い描きながら読んでいると、クライマックスでドカンと比類なき太さの枝が現れる。 盛り上がる場所だから興奮する場面かと思ったんだけど、なぜか変な安心感があったりなかったり。 この枝を消滅させるわけにはいかないという未来への責任なんかを感じたりしてるんじゃないかと心配したりして。

1冊にまとめあげて終わらせたのは、実はすごい才能のような気がします。 これほどの世界があれば、続きだろうが外伝だろうがいくらでもできちゃうと思うのはラノベ的発想でしょうか。 無数の時間枝の中にたったひとつの児童文学が拡散していくさまとか、見てみたい気がします。

投稿者 ミキオ | 2007-10-31(水) 23:48:48 | [アニメ・コミック] | 2007年10月 | ツイートする

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